手投げにならない投げ方を覚える!!
体を大きく使って投げる=体幹をフルに使え!

体幹の力を利用した基本的な投球法を紹介します。

体幹で爆発的な力を生み出すピッチャーを育てよう

STEP3まで教えてきましたが、この3つだけでもしっかり指導が出来れば下半身主導でシンプルにバランスが取れた投球が出来るようになり、明らかにピッチングが安定してくるかと思います。STEP4は一転して球威(パワー)をテーマにします。

ピッチングでいう力の基本とは、下半身主導の動き(STEP1と2)で生み出した力と体幹(背骨と肋骨)で生み出す力です。

腕力は必要ありません。ここはしっかり抑えておいてください。体重移動と体の回転の2つの力を加算させてボールに伝えるという流れですね。

体幹で爆発的な力を生み出せるピッチャーを育てるのに基本となるのは3つ

  • 手足と体幹の区別をさせる
  • 縦の波動でボールに力を伝える
  • 複雑な回転運動を身体で覚えさせる

この体の回転運動が少年野球の指導者が考えている何千倍も厄介で、子供に教えるのが難しい部分の1つでもあります。野球が苦手なお父さんはしっかりポイントを抑えて根気よく指導するようにしてください。

背骨は柔らかく動くことを覚えてもらう

脊椎動物である人間も脊柱を柔らかく波打たせることができるということを覚えてもらいます。背骨を縦と横に波打たせるように動かすことがポイント。

やり方は色々ありますが、もっとも簡単で効果的なのは布団に寝転がり手や足を使わず背骨をゆったり大きく動かして、体を反転させたりその場から移動したりする方法です。慣れてくると色々な体勢からでもできるようになるでしょう。立って行うと重力がありますので動かしにくくなります。従ってまずは寝ながらコツを掴むといいでしょう。

体幹のゴールデンエイジは5歳

我々大人が寝転がって行っても体幹が一体となって動いてしまい、イタチのような波の動きは出来ません。ですが身体がまだ柔らかい子ども達は違います。小さい頃から当たり前のように行っておけば脊椎動物ですから、ある程度は手足と変わらず意識的に動かせるでしょう。

もちろん、そう簡単に野生のイタチのような動きにはなりませんが“ピッチングで違いを生み出すこと”くらいは可能でしょう。

単純に腰椎付近を回すだけなら誰だってできます。ピッチングにおいて「あるのに使えない・機能しない」状態の体幹ほど邪魔なものはありません。従ってピッチングで違いを生み出すためには、背骨や肋骨の波動はまだ柔らかさが残っている小学生低学年から徹底した方がいいでしょう。

縦の波動と肩甲骨を連動させる練習は必須

1つ目の方法で寝転がって背骨や肋骨を動かすことにハマってくれたら、今度は縦の波動でボールをリリースする感覚を覚えさせます。

やり方ですが基本的にネット投げで行います。両手にボールを持って前上方へ突き出すようにガッツポーズを行います。肩甲骨からボールまでまっすぐ繋ぐようにイメージしてください。(肩甲骨をせり出すようにするとわかりやすい)

手にうちわを持つようにイメージして、肩甲骨から扇ぐように軽く前後にボールを動かします。やさしい風を送るように柔らかく行ってください。肩甲骨からボールまではこの連動した感覚のままで行います。

繋がった感じが出てきたら次は背骨です。

背骨や肋骨を縦に揺らしボールをリリースする

背骨をゆったり前後に揺すっていきます。腰を痛めるほど激しく行わないでください。ゆったり大きく背骨が波を打つようにです。慣れてきたら後ろから前に動かす瞬間に肩甲骨へ力を伝えてボールをネットに投げます。

背骨は柔らかく猫背になり、投げる両腕はクロスする形で脇へ、です。左右の腕がクロスした上下は投球毎に交互に変えていくと良いかもしれません。終始リラックスしているはずなので、投げ終えた腕は自然とぷらーんという動きで下へ垂れると思います。

従って主観ではボールを投げているというより、体幹の波動で勝手にボールがリリースされたという感じです。

縦・横・回転でボールを投げることを徹底する

3つ目はキャッチボールで行います。

STEP2の壁に腰をくっつけて股関節の体重移動を練習しましたが、この予めステップした状態で投げるノーステップで行うといいでしょう。

まずは、サード方向(右投手の場合)に胸を向けた状態で背骨の横の波動を行います。ゆったり大きく行いましょう。上下動してしまい下半身がキツイ場合は歩幅を極端に狭くしても構いません。

次に胸を相手に向けて2つ目の縦の波動を数回繰り返します。ゆったり大きく。腰に負担が集中しないように肋骨付近もバランスよく波打たせます。

縦が出来たら、胸をサード方向へ戻し背骨の回転運動を行ってください。これらすべてリラックスして行えば、腰椎から胸椎、頸椎と下から順序良くスムーズに回転するはずです。

ノーステップで足を開き、ゆったり大きく背骨を横へ数回、縦へ数回、回転を数回をスムーズに行いその流れのままボールを投げる。これでキャッチボールを行います。

腕じゃなく体幹でボールを投げることを教える

この練習の目的は、体幹の波動を使うことで信じられないほど爆発的なエネルギーを生み出すシステムをつくることです。実際にはこの背骨と肋骨のコンビネーションで投げると力感の割に驚くほど飛距離が出ますので、それを実感してもらうことの方が大きいです。

小手先でボールを投げるのではなく勝手にリリースされる、波動のエネルギーがボールに伝わった時の独特のリリース感覚。これができれば「0から100へというイメージ」が体感としてわかるはずです。

少年野球の指導で最も基本となるのが体幹の波動

最後にSTEP4のまとめです。単純に体を回すだけの指導ではダメだというのは理解していただけましたか?野球云々というより投動作を人間が行う時に脊柱の波動が使えないというのは大きなロスだからです。どんなに大きく体を使おうとしても背骨や肋骨が使えなければ、それは手投げということです。

『良いピッチャーは胸の張りが素晴らしい』なんて表現していますが、肋骨や背骨が柔らかくしなるという機能が無ければピッチングフォーム以前にこういう動きは不可能なわけです。

もっといってしまえば、我々大人のガチガチに固まった身体で、いま流行りの体幹トレーニングを行っても外面の腹筋や背筋を強化する程度しか効果はなく、脊椎動物が持つダイナミックな体幹の動きは残念ながら鍛えられません。

ご察しの通り一流のピッチャーは大人になってもそれらが異常に柔らかいということ。子どもの内から徹底したほうが良いと言ったのはそういうことです。極端な話ピッチングフォームなんて草野球人になっても変えられますが、脊柱や肋骨の波動は大人になると中々変えることはできませんから。


体を大きく使って投げろとは腕を大きく使ったり腰椎を単純に回すだけではありません。

  • 体幹の縦と横の波動+回転の複雑な動き
  • 体幹で生み出した力を肩甲骨からボールへロスなく伝える

この2つのポイントは威力のあるボールを投げるのには必須ですから、しっかり抑えておいてください。