子どもが野球を辞めたくなる前に取るべき対策

小学生に対して野球を指導するのは本当に難しいですよね。上手くならなきゃ野球の楽しさは伝わらないですし、そのためには嫌でも多くの練習を行わなければいけません。学校で教える算数なんかも、本人が公式を多少解ってくると問題が解けるようになり、解くまでの楽しさというのも生まれてきますが、そのためには多くの勉強を行わなければいけません。

ただ、運動と勉強が決定的に違うところというのは「独創性」が求められるということ。学校の勉強は、パターン化やノルマ化を生徒へ徹底させればテストの点は取れますが、野球でノルマ化やパターン化を選手へ強要すると、大事な試合の緊張する場面で必ず凡ミスします。運動のパフォーマンスを上げるには動作を支配している脳機能の高度化がカギを握りますが、脳に刺激の無い単純な作業の繰り返しは返ってプレーが下手くそになりますので注意が必要です。今回のテーマは子供のモチベーションについて少々お話ししていきましょう。

指導者は「基本」を見直すことが求められる

私は野球が上手くなるには技術とセンスのバランスが必要であると言いましたが、このバランスは高校生への指導よりもむしろ小学生の指導の方が難しいんですよ。基本的な野球技術がない小学生には、まず野球のスキルを教えなくてはいけません。ただ、この基本というキーワードを指導者側が誤解していると子供たちは野球へ対する情熱がすぐに失せるでしょう。

たとえば、多くの指導者がいう「守備の基本」。「腰を落とせ」「グラブは前」「上から投げろ」これらはハッキリ言って守備の基本とは違う。守備の基本とは「相手よりも早くボールを指定のベースへ届ける事」です。どんなに汚い投げ方でも、顔があさっての方を向いていても、正面に入れなくても、相手よりも早かったらアウトというルールです。つまり、基本は相手よりも少しでも早く指定のベースにボールを届ける事であり、上記の多くの指導者が基本と称する指導は、すべて効率よくアウトにするための数あるスキルの内の一つに過ぎません。

バッティングに演武会があれば優勝できたぜぇ

バッティングも同じです。ここで、ある少年野球選手の話を少々。その少年は空振りこそ少なかったものの、「センス理論でいうバッティングの基本」ができていなく、凡打の山を築きました。「壁を作って開かないように」「脇を締めて」「最短距離でバットを出す」「上から強く叩く」など多くの指導者が称するバッティングの基本を完璧にまで体現していたにもかかわらずです・・・。はい。その少年とは私です(笑)

打撃の基本とは本来「相手が投げたボールを誰もいないところへただただ打つ」という何ともシンプルなものですが、少年は「教えられた基本のフォームを打席で体現する」ことに必死だったようです。指定された型(バッティングフォーム)を競わせる演武会なら全国大会へ出られたかもしれませんが・・・。バッティングは演武会ではなく実戦であることを忘れてはいけません。少年野球の指導者の皆さんは今からでも遅くはないのでここは、くれぐれもお間違いなく。我々が基本としてきたものは、効率よくヒットにするための数あるスキルの内の一つに過ぎなかったのです。

基本とは独創性を問うもの

野球の基本とはある意味で非常に自由だと思っています。また同時に独創性も求められるものだと思っています。たとえば前述の守備の例でいえば、何としてでもアウトにしなさいというのが基本。捕り方や投げ方はスキル。教える側がこう考えると本当に面白いんですよ。これを踏まえて指導すると、小学生の動きが途端によくなり、強豪校の高校生、いやプロに匹敵するほどの身のこなしをしますからね。

小学生同士の鬼ごっこって冷静に見たときありますか?「何ふざけてんだよ。怪我するから止めなさい」と注意するくらいエキサイトしてきたときの動き。あんなに身体を上手に操作できるのになぜ守備でそれができない?基本が出来ていないから?彼らは鬼になるまいと必死になって逃げるわけです。これでもかというくらい全身を上手に動かし、また無意識にタッチに反応できるように集中して、です。

独創性のない動きや思考はすぐに鬼にタッチされてしまいますから彼らは必死です。これをゲラゲラ笑いながら集団で行っているんですからホント恐ろしいですよ・・・(笑)もうおわかりですね。これが私がいう基本です。そいつをベースに、効率よくアウトに出来るスキル、捕球の仕方や投げ方を教えてあげるんです。

子供が野球自体を嫌いになる理由

子供が部活を嫌いになるのは環境面が非常に大きいと思いますが、野球自体が嫌いになるのは多くはこの誤った基本という罠です。やはり、つまらないんですよ。決まった動きを黙々とこなせば試合に出してやるといわれても・・・。脳に何の刺激もない単純作業を繰り返し、ザコモンスターを討伐し延々とレベル上げ状態ではすぐ飽きるわけで・・・そこへ「なんでできないんだ」って怒鳴られれば、そりゃ野球の熱も冷めますよ。

私がいう「基本」には「それはプロがやる動きで基本のできていない小学生にはまだ早い」というのも通用しませんよね?もちろん捕り方、投げ方、打ち方には高度なスキルがありますから、小学生にはちょっと難しい技術もあるでしょう。でも私がいう「基本」に能力の制限は無いはずです。というよりそこに制限をかけるからフラストレーションが溜るんです。片手で捕ったからダメ、横から投げたからダメ、下からバットが出てるからダメ・・・。ダメダメダメといってもそれでヒットを打ったりアウトに出来ちゃうんだからしょうがないんですよ(笑)

実際に小学生の動きは本当にすごいですよ。ノンプレッシャーの遊びの最中でならという条件付きではありますが。こういう部分を上手に引き出しながら、「野球の基本的技術」を教えるのが指導者の腕の見せ所ですよね。最後に「子どもが野球を辞めたくなる前に取るべき対策は何か?」ですが、もちろん野球の基本を見直すこと!これだけで子供の情熱は失せる事はありませんよ。一般的に型にはまっていないのは基本ではないという考えもわかりますが、野球はそもそも「基本」が考えていたものと違うという事を十分頭に入れながら指導してあげてくださいね。

詳細はこちら

サブコンテンツ

CLOSE
CLOSE