バッティングで肩が下がるのは悪くない!?

バッティングで捕手側の肩が下がる選手にはどう指導すればいいのでしょうか?という質問を、少年野球や中学野球の指導者の方からよく受けるのですが、これは思っている以上にちょっと難しい問題なんですよ。というのもこの場合、「肩が下がること」自体が問題ではなく、いわゆるアッパースイングになってしまいバットが遠回りすることが問題なわけです。

しかし、多くの指導者の方は見た感じ肩が下がっているとすべてNGになってしまうようですね。ここは強い打球を飛ばすためには避けられないテーマですのでぜひ体感して指導に活かしてほしい動作の一つです。

バットの扱い方を判断する事が重要

まず見るべきポイントは何と言ってもバットの扱い方!年間で打率1割、20本塁打の成績でいいのなら、単に振り回すだけでもいいのですが、手元で微妙に変化させることが主流であり、打者はより確実性が求められています。バットという道具の性能を最大限引き出すためには力任せに抗うより、道具に素直に従うことがやはり得策でしょう。

たとえ肩が下がっていてもバットの扱い方が適切であるなら遠回りはしません。逆に重心を理解しておらず、力任せに強くスイングし尚且つ肩が下がり気味ですと、これはアウトですね。本当に甘いコースに気のないボールが来たり、たまたまタイミングが合うなどしない限り、厳しいコースや予測を裏切られた場合は手も足も出ないでしょう。私が何度も言っている「(動き出しの)早さ」が足りなくなるからです。従ってまずはバットの扱い方をチェックすることからですね。

ロックされるという現象

ここからはわかりやすく図を使って解説します。まず皆さんはダンベルを使ってトレーニングを行ったことはありますか?上腕二頭筋を鍛える方法で肘を固定し、ダンベルを自分側へ引き上げるあれです。図ではダンベルを敢えて大きくしましたが2、3キロ程度の負荷でも構いません。

通常のダンベルトレーニング
ダンベルを使った筋トレの例

支点となる肘関節を固定することで、機械的に引き上げ動作を繰り返す方法ですね。では、これはどうでしょうか?

ダンベルを持ち上げる
ダンベルを前上方へ持ち上げる

前上方へ重い物を持ち上げようとすると、肩関節や肘関節がピクッと反応して上がり気味になると思います。この上がり気味になり各関節がロックされたかのようなポジションが難敵なんです。

上げるのなら、逆に「下げる」という運動

打球を上げようとしたとき、突きの角度が重要になってくると「ホームランの打ち方」で解説しましたが、無料動画をご覧になってイメージ的に何となくわかりましたか?上げようとするとき逆に下げるという運動を行うとスムーズに上がりやすくなるという動きです。

肩を下げる動き
逆に下がるという動き

実際に行ってみてください。グランドではダンベルではなく、人に手で上から負荷をかけてもらうといいでしょう。負荷をかけられると上へ持ち上げようとしても手が中々上がらないと思います。しかし、手を上げようとし続けた状態から、ゆっくりと肩甲骨周辺を下げていくとスッと上がるんですよ。上げようとしたら逆に下げる。もちろんこの下げるときに拮抗している手まで下がってしまうと意味がありませんので、あくまで手は上げ続けるように意識しないといけませんが。

ここで重要になるのが、肩甲骨と肋骨のスライドですね。バッティングで強い打球を遠くへ飛ばそうとしたら、この部分が柔らかく動いてくれないとダメなんです。打球を上げようと突きの角度を斜め上方へ軌道を変えても「上げるなら下げる」のメカニズムを行えない身体では、いわゆる「下からバットが出ている力任せのドアスイング」になるわけです。

ちょっとやそっとでは深い突きは入らない

結論からいうとスイング中に肩甲胸郭関節(肩甲骨と肋骨の間)が高次元でスライドできれば、上半身のみではありますが「一流のスイング」と言えるでしょう。それくらい難しいです。これは「バッティングフォームを修正した」、「筋力トレーニングで強化した」などでは行う事ができない動きだからです。センストレには様々な方法がありますが、やはりこの部分は根気が必要ですよ。生まれてから現在までこの部分を高度に使用しなければいけない環境で生きてきた、というのなら呼吸するに等しいほど容易いでしょうが、ほとんどの方は使わなくても十分生きていける環境で生活してきたからです。

実際に幼稚園に入る前の子供の肩甲胸郭関節なんかは非常に柔らかく、バッティングで使ったら一流打者のそれに匹敵するほどです。もちろん年齢からしてプロの野球技術と体力などには遠く及びませんので、それだけでプロのボールを打てることはまずありえませんが。
ただ、もともと柔らかく使えるはずの機能を大人になるにつれ、環境によって失っていることは確かでしょう。この動きが難しいといったのは生まれてから現在までに、こういう積み重ねがあるからです。朝起きたら肩甲胸郭関節が柔らかく使えるようになったというのはありえませんからね(笑)

とにかく意識させて使わせることが大切

では肩が下がってしまう選手には、どのように指導すればいいのか?流れとしては、まず「バットの扱い方」を確認する。道具の重みを身体で知ること。それができれば力任せの無茶振りはできません。そして次に肩甲胸郭関節でバットをスイングすることを徹底させる。具体的なセンストレは公開していないものも含めるとかなりの数がありますが、いずれにせよ強く意識させることは大切です。無意識にそこからスイングする身体を創ることが深い突きへ繋がりますし、肩の「上げるなら下げる」という一流の動きが出来るようになりますからね。

確認の為に言っておきますが、この下げる動きは何十センチも下げる事を言っているわけではありませんよ。一流の選手は、スムーズに肩甲骨と肋骨がスライドしているので、見た目少ししか下がっていなくても「上げるなら下げる」動きが出来ていることもあります。ここは動作を見抜く眼力を養う必要がありますが、最初のうちは単に選手の肩甲胸郭関節を触ることで確認すればいいと思います。そうすることで自然とあの選手の上半身の使い方は綺麗だなと見抜けるようになってきます。

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