スイング面を意識しながらレベルスイングをマスターする

ヤクルトの宮本選手、ファイターズの稲葉選手が2000本安打を達成しましたね。

両選手ともホームランを打つパワーヒッターというよりは、コンパクトなアベレージヒッタータイプで、まさに日本伝統の打撃スタイルというイメージですが、バットの扱い方が非常にシンプルで、野手のいないところへ落とすために必要最低限のエネルギーでスイングする術を知っている感じです。

こういう部分は少年野球のバッティング指導で「コンパクトにスイングしなさい」と一致しますが、特に宮本、稲葉両選手のスイングは参考になりますよ。今回は両選手のバットの扱い方の特長とスイングの面について解説したいと思います。

バットという道具は素直に従う事が大事

両選手とも若い頃は、がむしゃらにバットを振り回していた時期もあったと思います。しかし2000本も打つわけですから、やはり力任せにスイングしていてはエネルギーの効率化という面で大変なロスになり、プロの投手相手に2000回もヒットを打つことは出来ないわけです。

年齢も40歳前後で体力が落ち、若い時と同じようなリズムでバットが振れない時期も当然あるでしょう。そこで「どうスイングしていけばプロで生き残れるか」という壁ができる。多くの選手は筋力強化しパワーに頼り、持ち前の技術に頼る。でも、これでは生き残れないんですね。30代後半で現役バリバリな選手は必ずそういう余分なものは必ず排除していくんですよ。
こちらは稲葉選手のスイング映像ですが、非常に綺麗ですよね。

ここでは、バットの扱い方のみに注目してもらいたいのですが、バットの重み(真芯)に対してグリップが積極的に動きます。重みに逆らわず肩甲骨や肘が動いてあげる。後ろを小さくシンプルにしている分だけ前を大きくし、ある程度崩されても対応できる幅を創るというイメージです。重みに逆らわずシンプルに素直に従うという事が稲葉選手の特長です。

小さく振っても身体は大きく使うが大事

こちらは宮本選手のバッティングです。

バットのポジショニングは少年野球で教わる基本型で最短距離でボールを叩くイメージですね。しかし、アマチュの選手と異なるメカニズムがあります。もちろん圧倒的な打撃スキルという部分もそうですが、なによりエネルギーの面で違いますね。

この打撃スタイルでは「小さくスイングしているので脇を締めてしっかり叩かないと力が出ない」と評価されそうですが、宮本選手の場合、かなり大きくスイングしています。注目すべきは両肩甲骨です。どういう事かというと、宮本選手は肩甲骨付近からバットをコントロールしているんですね。見た目はコンパクトでも身体の奥は大きく使っていく。結果的にシンプルに最高出力が出せますので外野までしっかり打球が飛ぶんです。

アマチュアの選手はこうはいきません。肩甲骨のラインからバットを操作できないからです。脇を締めてコンパクトにスイングし、結果的に肋骨や肩甲骨の動きが死んでしまう。表面的な部分を物まねしても一流の選手の本質には及ばない代表的な例の一つですね。

スイング面をライナー系の打球を前提に創り上げる職人

スイングの軌道を指導する際にはレベルスイングという教えが一般的だと思うのですが、これもプロの本質を見抜いて指導している方は少ないですね。上記で宮本選手の両肩甲骨に注目していただきましたが、比較的バットの操作感のイメージがしやすかったのではないでしょうか?「miyamoto」の背中のネームが巧みにズレていたのが見て取れた方もいらっしゃるかと思います。

それらを踏まえて宮本選手は普段どんな練習を行っているのか?キーワードは「両肩甲骨」「レベルスイング」ですよ。

どうでしょうか?これはヤバいですね(笑)両肩甲骨からバットを扱うという事を知らなければ、「おー宮本すげー。すべて芯で打ってるよ」で終わってしまい、何でもないふつーのティーバッティングにしか見えないでしょうが・・・。

投手方向へ繋がるラインとそれを通過するスイング面。この上をひたすら両肩甲骨とバットがスライドしていく・・・。我々アマチュアが、やれレベルスイングだ、ダウンスイングだといっているのが恥ずかしくなりますね(笑)ここまで徹底してこそバットが本当に通りたい軌道というのが身体でわかってくるんですよ。ただただ何万球と打ち込んだって、そういう本質をとらえて練習しなければ意味がないし、そもそも普段からそういうセンスのある身体を創らなければいけません。

身体の奥からスイングの軌道を創る時代

私が考案したセンストレーニングには子供たちに人気な「スナイパーショット」という練習法があります。(動画ページの指導者用センストレを参照)これは宮本選手が見せてくれるライナー系のスイング面を鍛える練習法なのですがこれが実に面白いんです。最初のうちはどうしても小手先でバットを操作してしまい従来通りの偽物のレベルスイングになってしまうのですが、投手と肩甲骨のラインを結び、肩甲骨とバットをスライドさせることを徹底させると見事に振りぬけるようになるんです。

スイング面の練習法や調整法を小さい頃からすでに知っているというのはかなり大きいですよ。技術でどうこうできるレベルではありませんし、普段からしっかり行っていないとできない動きです。コンパクトにスイングするように指導するのは私も賛成ですが、こういった本質力を無視した表面だけの物まねには反対です。レベルスイングを指導するにはまずはスイング面から!これからの少年野球の指導はそういう時代に入っていくと思います。

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