イチローは居合いの達人?!剣術家の極意と振り子打法の共通点とは?

メールNo.123 配信日2016/06/17

前回からの続きです。
センスアップ的に思うイチロー選手の3つの凄さの最後3つめ。
「ボールの軌道へ軸を密着させる」ということ。
これはバッティングのセオリーに反した「振り子打法」がわかりやすいでしょうか。

野球少年達を夢中にさせた「振り子打法」

”オリックスイチローの振り子打法”っていうのは、若い子は知らないかな?
我々おっさん世代が少年の頃に夢中になって真似した打ち方。

youtubeに当時の動画があるので貼っておきます
【メルマガ限定リンク】オリックス時代のイチローのバッティング

昔からバッティングの体重移動は
頭の位置を動かさないようにして
軸足に体重を残しつつ行うっていうのがセオリーでした。

当時イチロー選手はこれをあざ笑うかのように
独特な振り子打法で次々とヒットを量産し
従来のセオリーを否定してくるんです。

当時の少年野球で
振り子打法否定派の監督やコーチの多くは・・・・

・突っ込んだ打ち方だからパワーが逃げる
・そんなに移動したら目線がブレてミートできない

が主な理由だったのでしょうけど、
どちらもやってのけるのですから
子供たちが真似しようものなら『規格外、イチローの真似はするな』で怒られるまでがテンプレでしたねw

ヒントはSAMURAIにあった?!

で、面白いのがここから。
この一見して打撃指導のセオリーに反している振り子打法ですが、
昔日の剣術家が残した「敵を真剣で斬る極意」が面白いように一致する。

技の演武ではなく
本気で相手を斬る居合いは
当時「近場の鉄砲」と表現されていたほど速かったといわれています。
間合いに入れば、銃口を敵に向けてピストルのトリガーを引く動作よりも抜刀する動作のほうが時間的に早いって話。

やるかやられるかが日常ですから
動物の本能というか、現代じゃ考えられない身体運動の極地まで到達することもあるでしょう。
実際、プロ野球の世界でも真剣勝負で成長し
ある試合で突然覚醒して一気にスター選手になり大活躍するなんてこともありますから
(誤解を恐れずにいえば”真剣勝負”が成立している学生野球も起こり得てますけどね)

その真剣でのやるかやられるかは、
剣道の試合のように一礼してから構えて『エイヤー』と気合十分でいざ・・・ってわけにはいきません。
時には不意打ちという汚い手を使ってくる、
あるいは多対一の戦闘も切り抜けなければいけない状況もあるでしょう。
それをくぐり抜けた方法を「極意書」で書き記しているわけです。

極意書で一般的に有名なのは「五輪書」
その中でも「手足体一致」と「秋猴之身(しゅうこうのみ)」は振り子打法のそれと同じですごく興味深い。

体幹が強いだけじゃなく、その使い方が優れている

最近のスポーツ界では
「体幹の力」がパフォーマンス向上へ非常に役立つことが周知されてきましたよね?
その体幹の力を束ねるのが身体の中心線、そう軸です。
この軸を主導に、全面に、これでもかと活用するのが振り子打法の特長でもある。

前述の手足体一致は、
簡単にいうと「手足は体幹であり、時には体幹は手足にもなる」ってこと
イチロー選手はよく
体勢を崩されてもちょこんとバットに当ててヒットにしてしまいますよね?
まさにあれ。

体幹主導で手足が従属するようにタメを作ってトップが遅れてくる。
タイミングを外され不測の事態になったら体幹を止めて、タメを作っていた手足を出す。

単なる非力の当てて走るだけの打者なら前進守備にすればいい話なんですが
MLBの選手が揃って証言する「ハードヒットもあるからうかつに前進守備はできない」理由が
体幹主導の力強いスイング+変幻自在(手足体一致)な力のコントロールというわけです。

剣術家は多対一で囲まれた場合、
その場に居着いたら即あの世いきですから
体幹主導でどんどん次から次へと斬りやすい方へと体重移動しなくてはいけません。
しかし、相手も武士ですから死を覚悟して味方もろとも斬りかかってくる覚悟がある。
とうぜん150キロで外へ逃げる変化球並みの不測の事態も起こる。

そこで体幹から四肢へ瞬時に切り替える、次なる敵への体重移動(一塁へ走ると同じですね)は、すぐ体幹主導へ戻す。

斬るといってもぶった斬るのでは刃がすぐにダメになるので
やるならスッと頸動脈に当て致命傷を負わせるって戦闘スタイルになります。
動きながらピンポイントでそれをやるとなると・・・・
「そんなに移動したら目線がブレてミートできない」が通用しないわけです。
バッティングも問題はそこじゃない。

打撃指導の『グリップを残せは』正しかった

そこで重要なのが「秋猴之身(しゅうこうのみ)」

手足の短い猿になりなさいという意味なんですが、
これはどういうことかというと
手足はギリギリまで隠して、身を相手に密着させていきなさいということです。

振り子打法でいうと、グリップは後方へギリギリまで残しておいて
体軸をボールの軌道へ密着させていきなさいってこと。

先に手足を出してしまうと、
前述の通りどうしても不測の事態に対応できない。
変化や厳しいコースに居着いてしまい手が出ないんです。

もちろん目でボールをみることは大切ですよ。
ただ、以前何かのインタビューで『見てますよ。なんとなくは』とイチロー選手がいってましたが
ボールをちゃんと見る、それだけでは不十分ってこと。

投手がボールを自分に向って投げてくる以上、
手足を我慢して打てるボールかをギリギリまで見極め、ポイントまで呼び込む。
スイングはタメを作って「パワー」と「確実性」を共存させなければいけません。

したがって
どんな打者でも「秋猴之身」という考え方・身体運動は役に立ちます。

突っ込みの定義は難しいがパワーが逃げるわけじゃない

突っ込んだ打ち方だからパワーが逃げるってセオリーも
突っ込みの定義があやふやなので難しいのですが・・・・

1ついえることは
振り子打法のような手足体一致+秋猴之身でボールにべったりと密着していくスタイルは
自分が持っている体の重みをぶつけることができるため、
力いっぱい振り回すパワーと比べても劣ることはないです。

さらに面白いことに
体幹主導で四肢従属のスイングを実現するためには
脱力が大前提にないとできやしない。

気持ちよく眠りについた子供は例外なくとんでもなく重く感じますよね?
ストレスで身体がガチガチになったサラリーマンでさえも泥酔したら重くなります。
物が重いとその場に残るので引きずってしまうって感覚は皆さんもわかるかと思います。

その重みを感じてる状態で体幹主導の移動をすれば、四肢は”勝手に”残る。
多くの選手が『トップの位置でグリップを残せ』って指導されて
頭ではわかってるのに実際試合じゃグリップが残らない理由がこれ。
脱力が足りないから重みが生まれず、勝手に残らないからタメができない。

もちろん実際の体重が変化するわけじゃないけど
脱力で分散したものを加算させる・・・
イメージは一塊の持ちやすい箱より、水が入ったぐにゃぐにゃの袋。
その巨大なエネルギーをバットへロスなく伝えボールを芯で捉えるってのがバッティングのイメージです。

五輪書でも水になれっていってるのはそれ。
津波のすごさは皆さんも痛いほどわかるかと思います。
赤ちゃんは約75%、子どもでは約70%、大人では約60%が水で出来ていますから
その重みと威力を余すことなく体重移動のエネルギーに上手く利用するわけです。

『肩の力を抜いてリラックス』『脱力しなさい』っていうのは実に奥が深いですね!

MLB時代はより洗練された

こういう話をすると、
いったいどれくらいの幅を体重移動すればいいのか?厳密に何足分ですか?って
考え方をしてしまう人もいるでしょうけど
バッティングはあくまで運動なんで、理論で記号化してもしゃーない。

実際は物理量さえあれば同じことですから
軸を密着するときに、限りなく脱力して水になり、体幹主導の四肢従属スイングさえできればどんなフォームでもOKです。
わずかな体重移動しかしないノーステップ打法でも上記の条件が揃えば同じってこと。

実際、イチロー選手もオリックス時代の振り子打法と
MLB年間最多安打を記録した年の打撃フォームを比べると
圧倒的に動きが洗練されてますよね。無駄なものを削いだ感じ。
なのにパワーも確実性も増すわけです。

形にとらわれないこと、
セオリーはセオリーとして知っておき
実際の運動となると話は別っていう感覚がちょうどいいのではないかと

以前も言いましたが
スイングのベースがある程度できてきたら
”だいたいこんなもん”くらいじゃないと、逆に頭で考えすぎてしまい泥沼化しますからね。

密着の練習方法は?

具体的な練習法・・・・
いくつかありますが、これはテキストで表現するのは難しいです。

1番体感しやすいのが、実際に人へもたれかかる。ベターっと身をゆだねるように。
こどもがパパママにかまってもらいたくて甘えるように体重を預けるあの仕草です。

体軸をキープしながらそれができれば
そのままバッティングですよ。
パパママの軸に対して、自分の身を委ねていたのを
今度はボールの軌道に対して自分の身を委ねてやればいい。

慣れてきたら前述のとおり
動きを洗練させ自分のフォームに落とし込む

これくらいならだれでも簡単にできると思うので
自分の体重移動の質を見直すためにやってみるのもいいかもしれませんよ。

振り子打法へフォーム改造ではなく
調子のバロメーターとして人にもたれかかる感覚を利用する程度なら
いきなりフォームが変わることはないですからお勧めです!

ちなみに壁より人でやったほうが
重心を把握したりコントロールしたりしないといけないので難易度が高いしリターンも大きい。
ちょっとずつパパママが重心線をズラしてやれば、
それを察知して負けじと体重を預けてきたりとゲーム性も高いですしね。

鉛筆の削ってない部分同士をくっつけるより、めっさ尖ってる芯同士をくっつけるほうが・・・・って感じかな。
まぁ工夫やアレンジは皆さんにお任せします。

以上、
センスアップ的に思うイチロー選手の3つの凄さでした。

3,000本安打が楽しみですね!
皆さんもこの夏はイチロー選手のようにガンガン打ちまくって
相手チーム、いや味方までも脱帽するほどの活躍を期待してます。
ケガや体調には気を付けて練習&指導ガンバってください。

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